大学を諦めた末に…風俗勤めの女性が語る学生時代と底辺への転落

仕事

今回は、風俗店で働くJさん(20代・女性)に取材をしました。彼女はまだ若く、夜の仕事を始めたのもごく最近だといいます。しかし話を聞いてみると、学生時代から抱えていた経済的・精神的な悩みが積み重なっていった結果、今の底辺生活へと繋がってしまったようでした。見た目はごく普通の女性でありながら、時に過激なサービスを求められる夜の世界で生きざるを得ない理由とは何だったのか――。今回は、彼女の学生時代にフォーカスしつつ、その過去と現状を紐解いていきます。


中学・高校時代からの不安と孤立

 Jさんが育った家庭は、いわゆる貧困家庭に近い状況でした。両親が共働きで低収入、また兄弟も複数いるため、家計はいつも火の車。彼女自身「お小遣いなんてほとんど貰えなかった」と苦笑しながら話します。周りの友人が当たり前のように持っている最新のスマホやブランド服を買ってもらえないどころか、毎日のおやつですら贅沢というレベルの生活だったのです。

 中学時代から、友人の輪に入れず孤立感を味わう場面も多かったといいます。部活や放課後の遊びにかかる費用が出せず、周囲とのギャップを強く感じていたそうです。無理して合わせようとしても、お金の問題でうまくいかない。親も忙しく、「どうしても必要なものだけ買う」というスタンスだったので、イベント事や交際費の負担は常に大きな壁でした。

 高校進学後は、アルバイトでなんとか自分のお小遣いを稼ごうと動き出します。ファストフード店の深夜シフトや、土日祝日の飲食店勤務など、学業と両立しながら必死に稼いでいたのです。多少の自由なお金は増えましたが、同年代の友達と遊びに行く余裕などほとんどなし。成績もどんどん落ち込み、なかなか勉強に集中できなくなっていったと言います。彼女の中で「お金がないと、何もまともにできないんだ」という意識が、この頃から根付いてしまったようです。


大学進学とさらなる経済的プレッシャー

1. 奨学金とバイト漬けの日々

 両親から「大学に行きたいなら自分でなんとかして」という言葉を受け、Jさんは奨学金を借りて地方の大学へ進学しました。もともと勉強が好きというわけではありませんでしたが、高卒で働くと自分の将来がますます厳しくなるという不安があったからです。高校の先生からも「大学は行けるなら行ったほうがいい」と背中を押されました。

 しかし、奨学金で学費を賄っても、家賃や生活費は自力で負担しなければならないという現実が待っていました。最初はコンビニや飲食店のバイトを複数掛け持ちし、深夜まで働いて翌朝の授業に出るという自転車操業のような生活を送っていたそうです。結果的に寝不足や体調不良が続き、成績は振るわず、留年の危機に直面することもありました。

 奨学金の将来的な返済額を考えると、不安は増すばかり。大学に通いながらも「卒業後にすぐに返せるのか」「奨学金の返済だけで手一杯になりそう」とプレッシャーに苛まれていたのです。さらに親からの仕送りはほとんどなく、交際費や教材費など、何かと出費が重なるたびにバイトを増やすしかありませんでした。

2. 周囲との格差と孤独

 大学には裕福な家庭の学生や、実家から通う学生も多く、彼らは余裕のある暮らしをしていました。サークル活動や留学プログラムに参加し、休日には旅行や趣味を楽しむ――そんな姿をSNSで目にするたび、Jさんは強烈な劣等感に襲われたそうです。仲間に誘われても、心から楽しむ余裕などなく、いつもバイトを優先せざるを得ませんでした。

 彼女の中で「同年代の大学生は、自分とはまるで違う世界を生きている」という思いが強くなり、次第に友人関係も疎遠に。気軽に雑談できる相手はいても、本音を打ち明けられる友達はほとんどいなかったといいます。やがて「どうして自分だけこんなに苦しいのか」と自問自答するようになり、「お金があれば、もっとまともに青春を楽しめるのに」という焦燥感が募っていったのです。


夜の世界への入り口

1. きっかけはSNSの求人広告

 そんな折、Jさんの目に飛び込んできたのは、SNSの広告や友人がシェアしていた「高収入バイト」の情報でした。キャバクラやガールズバーなど、夜の接客業の求人は多種多様にあふれていますが、とりわけ風俗関係の募集は驚くほど待遇を厚くアピールしていました。

 「学歴不問、未経験歓迎」「短時間で高収入可能」――。深夜まで掛け持ちバイトをしてようやく手に入れる数千円と比べれば、破格の条件。Jさんは半ば衝動的に面接を申し込み、そのまま採用に至りました。最初は「どうせすぐ辞めるし、短期間だけお金を貯められればいい」という軽い気持ちだったといいます。

2. あっという間に染まった“楽さ”

 いざ風俗の仕事を始めてみると、バイトの時給とは比べものにならない日給が手に入ることに驚きました。実際の現場では緊張もあったし、ショックを受ける客もいたそうですが、それでも短時間の勤務で想像を超える報酬を得られる魅力は大きかったと言います。そのお金を使えば、日常の食費や雑費はおろか、奨学金の返済分まで一時的にはカバーできるため、大学の授業にも余裕をもって通えるようになったといいます。

 しかし一方で、肉体的・精神的な負担は相当なもので、初めは泣いて帰ることも多かったそうです。それでも「これだけ稼げるんだから我慢しよう」と心を押し殺し、次第に仕事に慣れていく自分が怖くもあったという彼女。それでも、いつの間にか辞めるタイミングを見失い、徐々に“底辺”と呼ばれかねない沼に足を突っ込んでいくのです。


現在の生活と過去への思い

1. 大学卒業の断念

 風俗の仕事で稼げるようになると、バイトを減らすどころか、むしろ金銭欲が増していきました。深夜勤務や派遣型のデリヘルで指名を取るほど一晩で稼げる額は跳ね上がり、それを見たJさんは「どうせならもっと働いて奨学金を早く返したい」と思うようになります。結果的に、大学の講義やテストを疎かにして単位を落とし続け、最終的には留年が確定。卒業は事実上諦めざるを得なくなりました。

 「勉強に集中する余裕もなかったし、続ける意味が見えなくなった」。そう語る彼女の目はどこか虚ろです。親には何度か「大学はどうなってるの?」と聞かれたものの、すでに風俗での高収入に味をしめてしまった彼女は、正直に打ち明けることができず、そのまま退学を選択しました。

2. 学生時代の後悔と断ち切れない夜の沼

 「大学に通っていた頃は、まだ未来があると思ってた。でもお金がないと、何もかも手に入らないと痛感した」。彼女はそう振り返ります。もしも奨学金だけでなく、適切なサポートや安定したバイトがあったら、こんな道には進まなかったかもしれない――。そんな「もしも」の想像が頭をよぎっては、過去の自分を責めてしまうといいます。

 とはいえ、一度足を踏み入れてしまった夜の世界は、想像以上に抜け出すのが難しいのが現実です。一時は「昼職に就こう」と思ったこともあったそうですが、少しの時給差でも大きく感じてしまうため、踏み切れずにいるのです。結果的に、現在も風俗勤務を続けながら同年代とは違う孤独な日常を送っています。


取材者の所感(終わりにかえて)

 Jさんの語る学生時代は、まさに経済的な苦境との闘いでした。周囲との格差に苦しむ中で「どうにかして稼ぎたい」という切実な思いが、風俗という夜の世界への扉を開くきっかけになったのだと感じます。しかし、短期的な高収入に惹かれて始めた仕事が、いつしか学業を圧迫し、将来のキャリアまで断念せざるを得ない状況に追い込む――。これは決して特異な例ではなく、現代社会の底辺で多くの若者が似たような道を歩んでいるのかもしれません。

 取材後、Jさんは「学生時代の自分に戻れるなら、もっと違う努力をしたい。でも結局、お金がなきゃ何もできないよね」とポツリと呟きました。その言葉は、光の届きにくい夜の世界に沈む一人の女性の悲痛な叫びのように聞こえました。大学を出て新卒で就職するという“王道”から外れ、風俗勤務に身を置く彼女の未来は、今のところ明るい兆しが見えません。底辺から抜け出せないまま、依然として不安定な夜を過ごすしかない――。そんな彼女の姿は、若者の貧困問題が生み出す暗い現実そのものだと痛感させられました。

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