長時間労働で心が擦り減る…“限界OL”が語る底辺ライフの実態

仕事

今回は、都内の企業で働く「限界OL」と呼ばれる状態に陥ったLさん(20代・女性)にお話を伺いました。彼女は正社員として就職し、一見すると安定した職に就いているように見えます。しかし、実際は長時間労働や低賃金、将来の不安に苛まれ、心身ともに疲れ切っている状況だといいます。学歴や職歴は決して悪くないのに、なぜ底辺と呼ばれるような暮らしに追い込まれるのか――。Lさんが語る「限界OL」のリアルをお届けします。


新卒入社と挫折

 私は都内の四年制大学を卒業後、一般企業に総合職として入社しました。大手とはいかずとも中規模企業で、福利厚生もほどほどに整っていると思っていたんです。新人研修が終わり、正式に配属されたのは営業部。ところが、すぐに予想外の壁にぶつかりました。

 入社してから1年ほどの間、仕事の納期とノルマに追われ、残業が月に50~60時間を超えることも珍しくなくなりました。上司は「やる気があるなら休日出勤も頑張れ」と暗に強要し、先輩たちも“当たり前”のように休日出勤していたので、私だけ断るのは難しかったんです。気づけば自分の時間はほとんど仕事に奪われ、まともに休む余裕すらありませんでした。

 しかも、思ったほど給料が上がらない。残業代は出るには出ますが、実際は固定残業分とみなされる部分が多く、実労働時間に見合った手当にはほど遠いと感じていました。家賃や生活費を払って、奨学金返済を終えれば、手元に残るお金はわずか数万円。結果、「これが正社員の現実なのか」と大きな虚無感に苛まれるようになったのです。


限界OLの実態

1. 長時間労働と低収入

 私の場合、月の手取りは20万円強。そこから家賃や光熱費、通信費などを払うと、自由に使えるお金は限られます。さらに奨学金やクレジットカードの支払いが重なれば、毎月カツカツ状態。外食や飲み会、趣味の出費はできる限り削り、食費も節約のために毎日コンビニ弁当の半額セールを狙うような暮らしが続いています。

 何よりつらいのは心身の疲弊。平日は9時から17時半までが定時のはずなのに、実際は夜10時や11時まで残業する日もざらです。帰りは遅く、週末も仕事の用件で連絡が飛んできたり、土曜日に急きょ出勤を命じられることもあります。結果として心が休まらないまま、月曜日を迎えなければならないのです。

2. キャリアアップの見えない将来

 入社前は「数年頑張れば昇給する」「頑張った分、評価される」と信じていました。ところが、実際はいつまでも安価な労働力として使われるだけという実感があります。私の会社は女性の管理職比率も低く、先輩を見ていると結婚や出産で退職していく人が多いです。昇進しても責任とプレッシャーだけが増え、手当がわずかにつく程度で大きく給料が上がるわけではないと聞きます。

 「限界OL」などという言葉を耳にするようになったのは、自分だけが苦しいのではないんだと気づいたから。周囲の同世代の女性社員も似たような悩みを抱え、「こんなに頑張っているのに将来が報われる気がしない」と口にする人が増えています。貯金もろくにできず、家族を支える展望も描けないまま、日々をやり過ごすしかないのが現状です。


プライベートの崩壊

1. 友人・恋愛関係の断絶

 働き始めて最初のうちは、同期や大学時代の友人と集まる余裕もあったのですが、残業や休日出勤が増えるにつれ、誘いを断ることが続きました。夜遅く帰る日々に疲れていると、休日は家で寝ていたいと思うばかり。気づけば友人関係は疎遠になり、連絡を取るのも億劫になります。

 恋人を作るという発想も、まともにデートする時間がとれないので諦めに近いです。実際に、会社の社内恋愛や合コンに参加しても、スケジュールが合わないまま自然消滅してしまうケースが多い。何とか続けても、疲れ切った自分に魅力を感じるはずがないと感じ、ネガティブな思考に陥りがちです。

2. 健康リスクの拡大

 忙しさのあまり食生活も乱れ、ストレス解消のために帰宅後にお酒を飲んでしまったり、逆に眠れなくなったりすることが増えてきました。慢性的な睡眠不足や体調不良にも関わらず、休みにくい職場の雰囲気があり、無理をして出勤するしかありません。風邪をひいたら薬で抑え込んで出社し、さらに体を壊す負の連鎖が続いているのを実感します。

 医者にかかる時間すら取れず、職場の産業医面談は形だけ。残業の申告を控えるよう上司に暗に示唆されることもあり、どうしようもなく追い詰められているのです。鬱病や適応障害で休職する先輩もおり、私自身いつ心が折れてもおかしくないと覚悟しています。


底辺へ転落する一歩手前

1. 退職を考えても決断できない

 「こんなに苦しいなら辞めればいい」という声があるのは承知しています。しかし、転職先を探す余裕がないのと、次の会社で同じような待遇になる恐怖が拭えません。奨学金の返済も残っているし、仮にフリーターに戻れば収入はもっと減るでしょう。親からの支援も期待できず、もし体を壊して働けなくなったら一気に貧困へ転落する危機感があります。

 何より、日本社会では正社員を辞めることに対して「根性が足りない」という偏見が付きまとうのも現実です。新卒からまだ数年しか経っていないのにキャリアを捨てるのはもったいない――そんな思いが頭をよぎり、結局ずるずると今の職場に留まってしまうのです。

2. 将来設計の見えない暗闇

 マンションの頭金も用意できず、結婚の相手もいない。年金制度への不安や、物価高と薄給の板挟みで、老後に対するイメージもまったく持てません。ニュースでは「女性の社会進出」「女性活躍推進」などと言われますが、実際はサービス残業や責任ばかりが増え、リスクと隣り合わせの働き方を強いられています。

 自分なりに資格取得を目指したり副業を検討したりもしましたが、そもそも勉強する気力と時間が残っていない。休みたい気持ちが勝ってしまい、結局何も手につかないのが現状です。そうして消耗するうちに、気づけば「もう無理かも」という限界が目の前に迫ってきます。


取材者の所感(終わりにかえて)

 Lさんの語る「限界OL」の姿は、現代の労働環境と経済事情が複雑に絡み合う、深刻な問題を映し出していました。正社員という安定を求めて就職したのに、結果的には長時間労働と低賃金に苦しみ、プライベートを失い、心身を蝕まれている――。そのまま転職や休職に踏み切れず、底辺へと沈む一歩手前の状態で必死にもがく女性たちが、実は社会のあちこちに存在しているのではないでしょうか。

 「働けるだけ幸せ」と言う人もいるかもしれませんが、本人が限界を感じるほどのストレスに晒され、将来の展望も持てずにいるならば、その働き方は本当に幸せと言えるのか疑問が残ります。Lさん自身も「今の会社で頑張るしかない」と言い聞かせつつ、心のどこかで「何もかも捨てて逃げたい」という思いを抱えているように見えました。

 こうした「限界OL」の実態は、見過ごされがちで声を上げづらい問題でもあります。会社にとっては使い勝手の良い社員かもしれませんが、本人が限界を超えたら、待ち受けるのは働けなくなるほどの精神的崩壊か、さらなる貧困への転落か――。いずれにせよ、光が見えないまま日々を耐え忍ぶしかない現状は、やはり「底辺」の苦しみに近いと言わざるを得ません。

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