シングルマザーが語る底辺フリーター生活の苦悩と絶望

仕事

今回、私は都市部の下町に暮らすBさん(40代・女性)にお話を伺いました。彼女は「フリーター」として日々をしのいでいますが、経済的にも精神的にも追いつめられた状況にあるように見受けられます。以前、彼女が体験した貧困や就労問題の実態、そして今なお続く苦しい生活の中で感じている絶望。その生々しい現状を、ここに記録いたします。


シングルマザーとしての出発

 Bさんがフリーター生活に陥ったきっかけのひとつは、離婚でした。もともと結婚していた頃は、ごく普通のパートをしながら家庭を支えていたそうです。しかし、夫が失業してから家計は急激に悪化。さらに夫婦間で価値観のすれ違いが深刻化し、子どもが小学低学年の頃に離婚を決意しました。

 最初は「自分さえ必死に働けばやっていける」という強い決意があったといいます。学歴がなくとも、真面目に働けば子どもを育てながらそこそこの生活は続けられるはず――。Bさんはそう信じていたそうです。

 ところが、現実は想像をはるかに超える厳しさでした。昼間は事務のパート、夜間は清掃のアルバイトと掛け持ちしながらも、家賃や生活費を稼ぐだけで精一杯。子どもを実家に預けることもしばしばでしたが、両親も高齢で、いつまでも頼れるわけではありませんでした。


生活保護をめぐる葛藤

1. 周囲の「冷たい視線」

 生活が苦しくなると、誰しもが一度は生活保護の受給を考えるかもしれません。しかし、Bさんは「周囲の目が怖い」「役所の職員が厳しい」などの噂を耳にして、申請をためらっていました。メディアなどでも、生活保護受給者に対して世間が抱く偏見や“バッシング”のような言葉を聞くことがあり、自分がまさにそういった視線の対象になることを恐れたのです。

 さらに、申請には多くの書類や証明が必要です。Bさんは掛け持ちバイトで常に時間がなく、子育てで手が離せないときも多々ありました。「こんな面倒な手続きがあるなら、もう少し頑張って働くしかない」――そう自分を追い込むように、フリーター生活を無理やり続けていくことになってしまったといいます。

2. 追いつかない収入

 Bさんは何度か正社員としての道を探しました。しかし、学歴や資格が不足していると、求人募集を見ても「応募条件を満たさない」ケースが多かったのです。仮に面接にこぎつけても、長く勤めてくれるのかと疑問視され、子どもがまだ中学生であることや、子どもが病気になった際に休みを取りやすい環境を求めていることなどを理由に断られることもありました。

 結局はフリーターで細々と働くしか道が残されず、月々の手取りは十数万円どまり。家賃や食費、光熱費、子どもの学費関連の支払いをこなせば、ほとんど貯金に回す余裕などありません。気づけば、パート・アルバイト先を掛け持ちして週に6日以上働いても、手元に残るお金はわずか。無理がたたって体を壊しても休めないという悪循環に陥りました。


心の余裕を失う日常

1. 子どもとのすれ違い

 働きづめの日々が続くうちに、Bさんは子どもとのコミュニケーションもままならなくなりました。帰宅が深夜になることも多く、朝は子どもが先に学校に行ってしまうため顔を合わせられないこともしばしば。「たまには一緒に食事を」と思っても、そもそもゆっくり食卓を囲む時間がないのです。

 子どもは反抗期を迎える年頃になり、家の中でほとんど口をきかなくなりました。「お金がないからどこにも遊びに行けない」「部活にかかる費用も出せない」。そんな状況を見かねてか、子どもも家庭に閉じこもり気味に。Bさんは「将来、子どもが自分を恨むのではないか」と不安を口にしました。

2. 誰も頼れない孤独

 友人と呼べる相手はいるものの、皆それぞれ家族や仕事を抱えており、Bさんに構っていられる余裕がないのが現実です。一方で、SNSを見ていると、同世代の女性たちは子どもを塾や習い事に通わせ、自宅を購入しているケースも多い。自分がどんどん社会から置いてきぼりにされているような感覚に陥り、ますます孤独が深まっていきます。

 Bさんは「どこかで愚痴を言いたくても、弱音を吐いたら負けた気がする」と話していました。実際に、フリーター仲間同士でもあまり深い話はしないそうです。疲れきっている人ばかりなので、お互いにかける言葉も見つからないのかもしれません。


息詰まるフリーター暮らし

1. 借金と闇バイトの誘惑

 どうしても今月の支払いが間に合わない、家賃が滞納しそう――そんなギリギリの状況が続くと、消費者金融から借金を重ねるしかない場面もでてきます。Bさんは「いけないとわかっていても、背に腹は代えられない」と言葉少なに語りました。

 闇バイトや違法性の高い副業の勧誘もちらほら耳に入ってきます。高収入の言葉は魅力的に聞こえますが、その先にはさらに深い闇が広がっているのを感じているそうです。しかし、目の前の生活費を稼ぐために、いつか自分もそういった道を選んでしまうのではないか――Bさんはそうした不安を常に抱え込んでいるのです。

2. 体力の限界と不安定な将来

 40代という年齢からくる体力の衰えも無視できなくなってきています。立ち仕事や夜勤のアルバイトは想像以上に体への負担が大きく、しばしば腰痛や肩こり、慢性的な疲労に悩まされています。病院に行くにもお金がかかり、症状が悪化しても結局は我慢して働き続けるしかありません。

 将来に対する不安は尽きません。子どもが独立したあと、Bさん自身が一人で生きていくにはどうしたらいいのか。年金もほとんど見込めない状態で、高齢になってからの暮らしが成り立つとは思えません。このまま底辺のフリーター生活を続けるしかないのか――そういった疑問は、日々の生活苦に追われているうちに片隅へ追いやられ、気づけば「考える余裕すらない」という状況に陥っているようです。


取材者の所感(終わりにかえて)

 Bさんの生活を取材していると、一時的に仕事や収入が回復しても、ちょっとしたきっかけでまたすぐ底辺へと押し戻されてしまう、そんな絶望的な負の連鎖を目の当たりにしました。懸命に働き続けても未来が見えず、しかも周囲の偏見や冷たい視線が追い打ちをかける。子どもに十分な学びの場を与えられず、親子関係にもひびが入りかねない。そんな悪循環が長期間にわたって断ち切れないのです。

 何より怖いのは、Bさん自身がすでに精神的にも疲弊しきっている点でした。将来の希望が持てないまま、ただ生き延びるためだけにアルバイトを掛け持ちし、いつ体が壊れるかわからない状況で突き進む――。話を聞いているだけで胸が苦しくなるほどの現実がそこにあります。

 この先、もしもBさんが体調を崩して長期的に仕事を休まざるを得なくなったらどうなるのか。子どもの学費や食費はどう工面するのか。借金が膨れ上がり、住居を失う可能性だって否定できません。すでに生活保護の選択肢も視野に入っているようですが、周囲の偏見や役所の対応を考えると、いまだに踏み切れないというのが現状です。

 取材を終えた今、私にはBさんの行く末が明るいものに思えません。むしろ、暗いトンネルの出口すら見えず、底辺という名の深い沼に沈み続ける危うさを感じています。こうしたフリーター生活者たちは、社会の裏側で密かに増えているのかもしれません。しかし世間の目は冷たく、体験談を表に出す機会もほとんどないのが現状です。Bさんの生活は、まだまだ今後も悪い状況が続きそうな気配しかありません。

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