キャバクラの華やかさと貧困が交錯するリアル:Eさんの苦悩

仕事

今回は、キャバクラという夜の街の象徴ともいえる場所で働いているEさん(20代・女性)に取材を行いました。華やかなイメージの裏側には、壮絶な過去と、現在も続く不安定な暮らしが隠れているかもしれない――そんな思いで彼女に話を聞いてみると、予想以上に厳しい現実が浮かび上がってきました。貧困や学歴の問題、そして水商売特有のプレッシャーに苦しむEさんの姿を、赤裸々にお伝えいたします。


キャバクラの世界に入ったきっかけ

 自分はEと申します。キャバクラで働き始めたのは、ちょうど大学進学を諦めた19歳の頃でした。家が貧しく、母子家庭だったこともあって、高校卒業後すぐに就職しようと考えていたのですが、就職活動はまったくうまくいかず。結局、アルバイトを転々としながら家賃を払うのにいっぱいいっぱいという生活を送っていました。

 そんなとき、SNSで見かけたキャバクラ求人の広告に目が留まったんです。「未経験でも高収入」「時給4,000円以上可」――。アルバイト先では時給900円台だった私から見れば、まるで夢のような話でした。家族からの仕送りもなく、家賃も払えなくなりかけていた私は、その言葉に飛びつくしかありませんでした。


華やかさと裏腹な現実

1. 瞬間的な高収入の魅力

 キャバクラで最初に体験したのは、確かに“短時間で大きく稼げる”という魅力でした。数時間働いてもらえるお金は、コンビニバイトの何倍にもなり、最初のうちは「こんなに簡単にお金が手に入るの?」と驚いたほどです。実際、家賃や光熱費を払っても手元に多少残るようになり、一瞬だけ“抜け出せた感”がありました。

 ただ、それはあくまで「日々の生活費」という意味での安定。時給に見合うだけの営業努力や、客を呼ぶプレッシャーがすぐにのしかかってくることを、当時の私はあまり理解していませんでした。

2. 水商売ならではの競争とノルマ

 キャバクラの世界は、想像以上に厳しい競争社会です。いつも同伴やアフターをしてくれる常連客をどれだけ持っているか、どれだけ場内指名を取れるか――それによって扱いがまるで変わってきます。私が所属する店では、成績が悪いと時給カットや出勤調整という措置があるのが当たり前。指名を取れなかった日は、自分がまるで“役立たず”のように思えて落ち込むことも少なくありません。

 しかも、店から求められるのは「もっとお酒を飲んで場を盛り上げて」「もっと売上を出して」という要求ばかり。お客さんの前では明るく振る舞わなければいけないのに、内心はいつも「今月のノルマは達成できるだろうか」「お客さんが離れたらまた貧乏生活に逆戻り」と不安でいっぱいです。


貧困から抜け出せない理由

1. 不安定な収入構造

 キャバクラは一時的に高収入を得られる場所ではありますが、そのお金は常に“浮き沈み”の激しいものです。お客さんの都合ひとつで大きく収入が変わるため、今日は時給5,000円でも明日は3,000円に落ちる、といったことが普通に起こります。固定給ではないため、支出のコントロールが難しいのです。

 さらに、ドレスやヒール、メイク道具にかかる費用もバカになりません。客前でみすぼらしい姿は見せられないので、華やかに着飾るために出費は増える一方。気づけば「今月は思ったほど稼げなかった」と言いながらも、借金やクレジットカードのリボ払いでしのぐ日々が続いていくのです。

2. 過剰な飲酒や体調不良

 キャバクラの仕事は夜間勤務が中心で、お酒を飲む機会が非常に多いです。客に勧められて断れずに飲み続けることもしばしば。それがストレス発散になるならいいのですが、翌日に二日酔いでダウンすることもあり、生活リズムはどんどん乱れていきます。

 自分の健康管理をしようにも、夜遅くまで働いて朝方に寝る生活なので、病院に行くタイミングも逃しがちです。結局、体調不良を我慢しながら出勤することも多く、精神面でも肉体面でも疲弊していくのが現実。これが長く続けば、自分の体がいつまでもつのかわからないという不安が大きくなっていくばかりです。


学歴や家族問題が追い打ちに

1. 学歴格差に対するコンプレックス

 私は高校卒業後に進学できなかったことを、今でもずっと引きずっています。キャバクラでお客さんと話していると、大学卒の方も多く、会話の端々で自分の知識不足を痛感する場面が少なくありません。「もっと勉強しておけばよかった」という後悔は募るばかりです。

 そのコンプレックスを埋めるように、ブランド品や高い化粧品を買って自己演出に走った時期もありました。でも結局、学歴も社会的地位もない自分が見栄を張っても、その瞬間だけしか気が晴れない。むしろ借金が膨らんで、ますます経済的に苦しくなっていきました。

2. 家族との断絶

 母子家庭で育ったため、母に対して負担をかけたくないという気持ちも強くあります。母は私がキャバクラで働いていることを快く思っていないようで、連絡するたびに「早く普通の仕事を探しなさい」と叱られます。だけど、今さら昼職で一から正社員を目指しても、生活を維持するだけの収入を得るのは難しい。そんなやりとりが続くうちに、自然と実家に帰ることもなくなりました。

 頼れる親戚もおらず、交友関係も夜の世界中心になってしまうと、気づけば孤独を感じる時間が増えました。お客さんと話すときは明るくしているけれど、終業後の虚しさは言葉にしがたいものがあります。


借金と将来への不安

1. ホスト通いの誘惑

 キャバクラで稼ぎ始めてから数年が経った頃、仲のいい同僚に誘われてホストクラブへ行くようになりました。最初は興味本位だったのですが、ホストたちから「頑張ってるね」「すごく可愛いよ」と言われると、日頃のストレスが一気に解放された気になり、つい散財してしまう。私自身、お客さんにお酒を勧めて売上を上げる立場なのに、今度は自分が“お客”としてお金を落とす側になっていたのです。

 もちろん、支払いはカードのリボや消費者金融のキャッシング。その結果、借金はみるみるうちに増えていきました。一時的に苦しさを忘れるために通ったホストクラブで、ますます経済的に苦しむという皮肉な結果に陥ってしまったわけです。

2. 底が見えない生活苦

 今となっては毎月のカード返済日が近づくたびに震えています。でも、キャバクラの収入を少しでも増やそうと必死になるほど、精神的なストレスは増大。加えて、体調を崩して出勤できない日があると収入は一気にダウンするので、貯金どころか借金返済すら危うくなる。もう抜け出せない負の連鎖に陥っているような感覚です。


取材者の所感(終わりにかえて)

 Eさんの話を聞いて改めて感じたのは、キャバクラという華やかな世界に光があればあるほど、その背後には深い闇が広がっているという事実でした。一時的に高時給を得られても、競争やノルマによるストレス、学歴や家庭環境のコンプレックス、そして借金地獄への道――。まさに底辺へと沈んでいく要素が次々と絡み合っています。

 現在もEさんは「来月こそは売上を上げたい」「この仕事で生き残っていかなきゃ」と必死で努力を続けていますが、状況が劇的に好転する見込みはほとんどないように思えました。健康面や精神面の不調を抱えながら、次第に経済的にも追いつめられていく。その末路はどこへ向かうのか――取材を終えた今も、私の心には暗い不安が残ります。彼女の未来には、まだまだ苦しい時期が続きそうな予感しかありません。

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