株の失敗で一夜にして転落…ネットカフェ暮らしに追い込まれたFさんの苦悩

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今回は、株取引にのめり込み、一夜にして多額の損失を被ったFさん(30代・男性)に取材を行いました。日本経済が不安定な時期に手を出した投資で大きく失敗し、底辺と言われる生活に転落してしまったというのです。投資の失敗談はよく耳にしますが、彼の現実は想像以上に悲惨でありながら、抜け出す糸口が見えないまま苦悩の日々を送っているように感じられました。それでは早速、彼が語る「転落までの道のり」と現在の生活についてお伝えいたします。


株で人生を変えようとした矢先の大失敗

 自分はFといいます。もともとはごく平凡なサラリーマンでした。給与も手取り20万円台と決して高くはありませんが、実家からの仕送りなどもなく、なんとか一人暮らしをしている程度の生活。貯金はほとんどない状態でした。

 そんな自分が株取引に興味を持ったのは、SNSやネット広告で目にする「短期投資で儲けた」「月収100万円達成!」といった派手な成功体験談に煽られたからです。最初は小さく始めたのですが、値動きの面白さにすっかりのめり込み、資金を追加するために消費者金融から借金を重ねるようになっていました。

 当時、国内外の景気は不安定ながらも、一部銘柄は乱高下を繰り返していました。そこで「ハイリスク・ハイリターンに賭ければ大きく儲けられるかもしれない」と欲が出てきて、どんどん信用取引(いわゆるレバレッジ)に踏み込んでしまった。少しでも上がった銘柄に飛び乗っては、すぐに利確して利益を狙う……そんなやり方が、運良く最初の1~2回はうまくいったんです。それで余計に自信がついてしまった。

 しかし、運よく勝てていたのはほんの序盤だけ。ちょっとした経済ニュースや世界的事件で相場が荒れたとき、マイナス方向に大きく振れた株価を見て、あっという間に追証(追加証拠金の請求)が発生。借金を返すどころか、損失補填のためにさらに借金を抱える悪循環に陥ったのです。もうこうなると、売り時を見誤った自分を責めても手遅れでした。


一気に転落した生活

1. 家賃滞納からの退去

 結局、投資でつくった借金は数百万円にふくらみ、月々の返済額も膨大なものになりました。もちろんサラリーマンとしての給料だけではとうてい追いつきません。家賃を優先して払おうとしても、クレジットカードや消費者金融の支払いが追いかけてきます。いつしか家賃を滞納し、大家さんから「来月中に退去してほしい」と言われるまでに追い詰められました。

 数か月間は親しい友人に頭を下げて転がり込もうとしたものの、皆それぞれ家庭や仕事を抱えていて、いつまでも置いてもらえるわけではありません。実家に連絡すれば「どうしてもっと考えて行動しなかったのか」と叱責されるのは目に見えていましたし、そもそも親も余裕がある環境ではなく、「自己責任だから」と断られてしまいました。

2. ネットカフェと車中泊の渡り歩き

 結局、ネットカフェのナイトパックで夜を過ごすのが日常化しました。だけど、ネットカフェも安くはありません。一晩1,500円前後。シャワー代やドリンク代、コインランドリーなどの細かい費用が積み重なると、想像以上に出費がかさみます。投資の借金返済を抱えた状態では、毎日ネットカフェ暮らしを続けるのは正直きつい。

 そこで車を手放していない人は「車中泊」を選択することも多いのですが、私はすでに車を売却して借金の返済に回していました。なので、選択肢はネットカフェか、日雇い派遣で短期的に稼いだお金をつぎ込んで安ホテルに泊まるか。どちらもお金が底をつけば追い出される日常です。


経済的・精神的プレッシャー

1. 日雇い派遣での疲労

 今の主な収入源は日雇い派遣のアルバイトです。引っ越し作業や倉庫内ピッキング、簡単な仕分けなど体力勝負の仕事が多く、朝から晩まで肉体労働というケースも珍しくありません。もともとデスクワークをしていた自分にはかなり過酷で、腰痛や肩こり、足のむくみに悩まされる日々。しかも日当は高くても1万円前後なので、借金返済には焼け石に水です。

 株で失敗さえしなければ、こんな思いをしなくて済んだだろうに――。作業中もそんな後悔ばかりが頭をよぎります。運良く働ける日があっても、翌日は仕事が見つからないなど不定期なので、収入は安定しません。おまけに借金の取り立て連絡は容赦なく続くため、心が休まる瞬間がないのが現実です。

2. 自責と孤独感

 SNSやニュースサイトを見れば、株投資に成功してセミリタイアしている人たちの声が目につきます。自分だってああなれると思っていたのに……と悔しさと惨めさが入り混じった感情に苛まれるのです。友人は次々と結婚して家庭を持ち、まともな職で堅実に生きている。その一方で、自分はネットカフェや簡易宿泊所を渡り歩いている。何がこんなに違ったのか、と自問自答するものの、答えは見つかりません。

 心療内科に通うお金も時間もない状況ですし、周りに頼れる人もいません。両親からも見放され、友人も距離を置くようになりました。借金取りは待ってくれず、精神的にも経済的にもどんどん追い込まれているのが今の自分の姿です。


将来への展望が見えない現状

1. 再就職へのハードル

 「早く普通の会社に再就職して安定した収入を得るべきだ」という意見はもっともです。でも、いざ求人を探しても、まとまった空白期間があれば書類選考で弾かれることが多い。しかも転職活動にはスーツや交通費などの初期投資が必要で、今の自分にはそんな余裕すらない。面接を受けても「なぜ退職したのか」「なぜこんなに転職を繰り返しているのか」などを聞かれ、言い訳にもならない説明をするしかありません。

 借金が膨らんでいる現状では、とりあえず返済のメドを立てなければいけないのに、返済のために日雇い派遣をやっている限り、転職活動に本腰を入れる時間や体力が残りません。結局、底辺の悪循環から抜け出す手がかりが何も見つからないまま、日々を過ごすしかないのです。

2. さらなる転落の恐怖

 このままでは何かのきっかけで、完全に路上へと放り出されるのも時間の問題だと感じています。ネットカフェ代すら払えなくなったら、寝る場所も失うことになる。体調を崩して働けなくなったら、そのまま連絡がつかなくなって借金も滞納がちになり、取り立てはますます厳しくなるでしょう。

 もう一度株でリベンジしたい――そんな考えが頭をかすめることもありますが、同じ過ちを繰り返したら、二度と立ち直れないかもしれません。そもそも資金も信用も失っている今、投資で挽回など夢のまた夢。かといって現実の借金返済が減るわけでもなく、気づけば未来への希望は限りなく薄れていくばかりです。


インタビュアーの所感(終わりにかえて)

 Fさんの話は、私たちがよく目にする「株投資で人生逆転」「成功者の華やかな暮らし」というイメージの真逆を突きつけてきました。レバレッジをかけた投資に失敗すると、こうもあっという間に底辺へ転落してしまうものなのか、と驚かされるばかりです。しかも一度負債を抱えると、生活を立て直すのが想像以上に難しいという現実をまざまざと見せつけられました。

 Fさんは今も日雇い派遣のスケジュール表とにらめっこしながら、なんとかその日暮らしを続けています。しかし、借金が雪だるま式に増えた今、収入を一時的に増やした程度では完済への道が遠いことは明白。しかも身を置く環境が不安定なせいで、転職活動や新しい資格取得などの手段も取りづらい。まさに四面楚歌の状態なのです。

 このままでは「いつか破綻する日が来るのでは」と感じざるを得ません。ギリギリの綱渡りをしているような彼の生活は、改善への兆しが見えないだけでなく、むしろさらなる悪化の可能性さえ感じられます。金銭的にも精神的にも底なし沼にはまり込んだFさんの姿は、株投資の怖さと、失敗した後の過酷な現実を痛感させるものでした。

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