インド人との国際結婚が招いた底辺生活…ビザと仕送りに追われる妻の叫び

生活

今回取材させていただいたのは、インド人男性と結婚したものの、様々な文化や経済面の違いに苦しみ、今では底辺と言われる生活に陥っているKさん(30代・女性)です。国際結婚と聞くと、華やかでロマンチックなイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、実際は言葉の壁や家族間の価値観のズレ、ビザや生活費の問題など、多くの難題が待ち受けていました。幸せになるはずの結婚生活がどうしてこんなに苦しいものになってしまったのか――。Kさんの体験談を通して、その現実を明らかにしていきます。


インド人との出会いと結婚までの経緯

 私が夫と出会ったのは、都内のインド料理レストランでした。当時の私はアルバイトを掛け持ちしながらフリーターとして生活しており、店の常連として通っていたんです。夫はそこのシェフで、笑顔が素敵でサービス精神が旺盛な人でした。日本語もある程度話せたし、何より「自分の国で家族を支えている」という話を聞くうちに「この人なら頼れるかもしれない」と思うようになったんです。

 交際を始めた当初は、異国の文化や言語に触れられる新鮮さがありました。インドの華やかな映画やスパイスの効いた料理の奥深さ、彼の親族とのビデオ通話で垣間見るインドの生活風景――どれも私には刺激的で魅力的に感じられたのです。結局、出会って1年ほどで「一緒に生きていこう」と決意し、籍を入れました。

 けれど、結婚はゴールではなくスタートに過ぎませんでした。むしろ、国際結婚ならではの問題が、次々と私たちを襲うことになったのです。


ビザと就労の苦悩

1. 在留資格の問題

 夫はもともと「技能実習生」として来日し、その後は飲食店の就労ビザで働いていました。結婚を機に「日本人の配偶者等」という在留資格に切り替えられるかと思いきや、手続きは簡単ではありませんでした。書類の不備や審査に時間がかかり、その間はアルバイトを制限されるなど、生活費の問題が浮上したのです。

 さらに、在留資格の更新には「安定した生活基盤」が求められます。しかし、私の収入はフリーター並みで不安定なうえ、夫の就職先も店の業績不振で給与が下がる一方でした。ビザ申請に必要な預金残高を十分に用意できず、書類準備に苦戦するたびに「このままでは夫が日本にいられなくなるのでは」という不安が募りました。

2. 低賃金と長時間労働

 結局、夫は飲食店で長時間働くしか道がありませんでした。インド料理店での勤務は1日10時間を超えることもざらで、月給は20万円に届くか届かないか。もちろん、その一部は本国の家族に仕送りをしています。私も複数のアルバイトを掛け持ちして家賃や光熱費を賄いますが、なかなか貯金に回せる余裕はありません。

 国際結婚だからといって特別手当が出るわけでもなく、むしろ各種手続きにかかる費用が増えることもあります。役所への申請や公的証明書の翻訳など、地味にかさむ出費が家計を圧迫し、いつもギリギリの生活が続きました。


文化や価値観の壁

1. インドと日本の家族観の違い

 インドの家族観は「家族全体を支えて当たり前」という考え方が強いそうです。夫の両親や兄弟、親戚に至るまで「日本で働く息子からの仕送り」が当たり前になっている節があります。本人たちに悪気はないのかもしれませんが、「日本ならもっと稼げるはずだ」と期待する声もあり、夫は常にそのプレッシャーを感じていました。

 同時に、私にも「私たちの生活さえギリギリなのに、これ以上どうやってお金を送るの?」というストレスが募ります。夫が実家とのビデオ通話で「家族への支援が足りない」と諭されている姿を見ると、私まで責められているような気持ちになり、言いようのない孤独感にとらわれるのです。

2. 食事や生活習慣のすれ違い

 私は日本食メインの食生活でしたが、夫はスパイスを多用するインド料理が基本。自炊するにも手間とコストがかかるうえ、宗教の制約で食べられない食材があったりと、食事メニューには常に気を遣いました。しかも私が時々日本食を作っても「味が薄い」「カレーがないと落ち着かない」と言われることもあり、互いの思惑が擦れ違うばかり。

 加えて、休日の過ごし方や金銭感覚にも大きなギャップがあります。夫は「家族を喜ばせるためなら多少の借金も仕方ない」という発想ですが、私は「これ以上借金を増やしたら暮らしていけない」と強い不安を感じるのです。こんな細かな日常の食い違いが積もり積もって、夫婦関係を少しずつ蝕んでいきました。


底辺へと沈む生活

1. 差別や偏見に晒される日々

 夫の肌の色やイントネーションを理由に、時々周囲から差別的な言動を浴びることがあります。アパートを探すときも「外国人はちょっと…」と断られるケースがあり、家賃の安い物件ほどその傾向が強い印象です。やむを得ず築年数の古い、狭い物件しか借りられず、夫は「日本人は冷たい」と感じ始めているようでした。

 また、夫が職場で雑用ばかり押し付けられたり、何か問題があると「外国人だから理解できないんだろう」と決めつけられたりと、理不尽な扱いを受けることも。私が店長に抗議しようとすると逆に「あなたの夫が日本語をもっと勉強するべきだ」と叱られ、どうしようもなく落ち込むしかありませんでした。

2. 夫婦喧嘩と孤独

 経済的に苦しく、文化的にも価値観が噛み合わない生活は、夫婦間のトラブルを絶えず生み出します。ちょっとした口論が「仕送りを優先したい夫」と「家計を優先したい私」の対立に発展し、いつの間にかヒートアップ。言語の壁もあり、相手の言い分がよく分からないまま感情的にぶつかってしまうことも多々ありました。

 気づけば、周囲に相談できる人はほとんどいません。私の家族は「外国人なんてやめておきなよ」と最初から反対気味だったので、今さら泣きつくことなどできない雰囲気です。夫の親族に話しても「国に戻れ」と言われるのがオチ。孤立感を抱えたまま、互いに不満を募らせる日々が続いています。


取材者の所感(終わりにかえて)

 Kさんのケースは、単なる国際結婚の苦労話というよりも、経済的にも社会的にも追い詰められた「底辺暮らし」に陥るまでの経緯が色濃く表れていました。ビザの取得・更新にまつわる複雑な手続き、在留資格維持のための安定した職探し、両国の文化や家族観のギャップ、そして差別や偏見――。どれも解決が容易でない問題ばかりです。

 最初は愛情と好奇心で始まった異文化同士の結婚が、いつの間にか金銭的プレッシャーと家族の期待、職場での人種的偏見などに押しつぶされて、崩壊寸前にあるかのよう。Kさん自身も「このままじゃ、夫婦ともども破綻するんじゃないか」と口にするほど疲弊しきっています。彼女の表情は暗く、未来への希望が見えない様子が痛々しく感じられました。

 最悪の場合、ビザの更新ができず夫が日本にいられなくなるかもしれません。あるいは多額の仕送りで生活が行き詰まるかもしれません。どのシナリオも、底辺から這い上がるチャンスを見出しにくい現実を突きつけてきます。取材を終えた今、国際結婚は確かに魅力的な面もある一方、一度つまずくと、そこから先は出口の見えない暗闇に落ちてしまう危険も大きいのだと痛感しました。Kさん夫婦の状況は、残念ながら今後もしばらく悪い方向へ進みそうな気配しか感じられません。

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